『上達の技術 一直線にうまくなるための極意』 児玉光雄著 SBサイエンス・アイ新書
上達の技術 一直線にうまくなるための極意 (サイエンス・アイ新書) 児玉 光雄 ソフトバンククリエイティブ 2011-04-20 売り上げランキング : 14287
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私はどちらかというと不器用で、これまでいろいろなことを途中で放棄してきてしまったような気がします。唯一続いているのが写真を撮ることと、仕事の鍼(はり)ということでしょうか。
写真は趣味だからいいとしても、鍼は仕事ですから途中で放り出すわけにはいきません。しかし、当然ながら“鍼は技術”という側面もありますので、もっともっと技術面から向上できる方法はないかと思うわけです。また、鍼の仕事をしておりますと、特にスポーツ選手やスポーツをされている方の施術をすることもあり、どうやったらその技術を向上させることが出来るのか、相談を受けることがあります。
ということで、何かに打ち込んでいる方にお薦めの一冊がこちらの『上達の技術 一直線にうまくなるための極意 』です。
私を含め、多くの方は天才ではありません。長嶋さんのような天才肌の方ですと、「来た球をバシッと打つんだ!そうそう!」なんていう身振り手振りの感覚的な指導でも、何だかコツをつかんで技術が向上していくことはあるのでしょう。しかし、そういった天才肌でない限り、指導は具体的で、科学的な根拠があった方のが納得しやすく、向上の手がかりになります。この辺りは、野村克也氏の本が役に立つと思いますが、自分の利点を最大限に活かすための、効率的な努力の仕方を考えるべきなのかなと私は思います。
本書の最初は、脳と運動神経の仕組みなどを解説し、そこから、どうやったら能率が上がるかを説明していきます。
一本調子でとにかく練習すればいいというのではなく、むしろ急速や睡眠を入れた方のが効率が上がるとか、記憶の定着のためにいつ復習したらいいとか、そういった小さいけれども成果の差が出る、今すぐ出来る方法を伝授してくれています。さすがに後半は少し散漫になるところもありますが、一貫して報われる努力の仕方を教えてくれております。
本書はやはり身体を動かす技術としてのスポーツ寄りには書かれていますが、私のような技術職の方にも応用が出来ると思いますし、集中や記憶のことなどは、ビジネスにも応用できるのではないでしょうか。
そういえば、私が背中に施術する散鍼という鍼の技術。これは岐阜羽島の先生に伝授していただいたものなのですが、最初はうまく出来ませんでした。何度やっても左手と右手のタイミングが合わずに鍼を曲げてしまいます。しかしある時、練習の合間に昼寝をしてしまい、目が覚めて練習を再開したら、昼寝の前より技術が向上していることに気がつきました。これは、寝ている間に脳が必要な情報を自動的に選り分けてくれたものなのですが、こうったことも本書に書かれていますので、あの時の昼寝はまんざら無駄ではなかったと、これからは昼寝も推奨していこう、なんて思っておりまして、もし昼休み後に治療院の電話がつながらなかったら、昼寝をしているかもしれませんので、ご了承くださいませ(笑)。
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上達の技術 一直線にうまくなるための極意 (サイエンス・アイ新書)
- 作者: 児玉光雄
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2011/04/20
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『数に強くなる』 畑村洋太郎著 岩波新書
数に強くなる (岩波新書) 畑村 洋太郎 岩波書店 2007-02-20 売り上げランキング : 83230
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小さい頃やっていた習い事で、もう一度きっちりとやり直したいものの一つに、書道と算盤があります。書道については、日本の文化でありますし、やはりこの歳になると字がきれいであると言うことは、教養のある大人のたしなみとも思いますので、きれいに書けるにこしたことはないですよね。
そしてもう一つの算盤。
小学校の時、算盤をやっている友達が多く、自分もやってみようかなと思って行ってみたのですが、何がなんだかさっぱり分らずすぐに挫折。世の中には計算機というものがあるのだから、それを使えば問題ないし、筆算(ひっさん)が出来ればいいんじゃないかと開き直り、だいたいあの珠を動かすことの必要性が分らなかったのです。あの算盤の珠が何を象徴しているのか、そういったことがわからないと先に進めない厄介なところがありました。
しかし、算盤を学び直したいと思ったのは、司馬遼太郎の本を読んだ時でした。たしか司馬遼太郎の『司馬遼太郎全講演 (朝日文庫)』を読んだ時だと思うのですが、その中に、「西郷隆盛をはじめ、幕末に活躍した志士たちはみなそろばんが出来た」という記述がありました。新しい時代を切り拓くために奔走した志士たちは、単に武術に長けていただけではなく、しっかりと数字で以て明治維新の計画を練っていたと言うことなのです。政治家と数字というのは、どうも私の頭の中では全くの別物だと思っていたのですが、そうではなく、政治家こそ数字に詳しくあるべきで、国全体を把握するための手段として、数字に明るくしておくということが必要なのだと、この記述を読んで思ったのです。
私は大学で経営学を学びましたが、当時はやはり数字の把握が十分に出来ませんでした。どれくらいの規模なのか、何を意味するのか、指標となる数字の意味が今ひとつ飲み込めず、実感がもてないまま授業を受けていました。いかんですよね、これは。
現在私は、政治家ではありませんし、鍼灸院を経営はしていますが、どちらかというと職人気質で現在は一人でやっておりますので、経営者という感覚もありません。なので、数について強くなる必要はないのですが、しかし、それでもやっぱり数についてある程度の受容能力を身につけておくことは必要だと思っています。もしかしたら、こういった数への教養を高めておくと、鍼灸治療にもいい視点が出来るかもしれない、と思うわけであります。
と、話が全然違う道にそれましたが、『数に強くなる (岩波新書)』です。
著者の畑村洋太郎氏は、『失敗学』で有名になった工学系の教授です。テレビにも度々出演されていますし、2011年5月からは、政府の東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長にも就任されているので、ご存知の方も多いかと思います。
ということで、畑村洋太郎氏は、「数について強くなる」ためにも適任の先生かと思いますが、本書は講義を聴いている感じで、喩え話しを交えながら分かりやすく進んでいきます。ところどころに氏のユーモアも入ってくるので、数に弱い私などでも肩の力を抜きながら読むことが出来ます。全編通して難しいところはなく、なるほどなるほどと興味をそそられながら一気に読み終えることが出来ました。
読み終えた後、こうして数と付き合っていくことが大切なのだと、痛感しています。また、いろいろな事象を数に変換することで、真実の側面が見えてくることがあると言うことも知ることが出来ます。数に対する抵抗力をなくし、数に親しむ、そういった姿勢を本書から学ぶことが出来ます。また、本書の中では、真のリーダーは数に強いというような記述もありましたが、私が以前司馬遼太郎の本を読んでいたことと同じ内容で、やはり算盤を学び直してみようかと思った次第であります。
後半はより具体的な数の応用の仕方があったり、畑村氏独特の見解があったりと、それぞれの仕事で応用可能なものがちりばめられているかと思います。
もう一度数について学び直したい方、現在中高生くらいで数学の授業に苦手意識を持ち始めている方などにお薦めです。
【畑村洋太郎氏の他の著書】
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『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』 藻谷浩介 角川oneテーマ21
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) 藻谷 浩介 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-06-10 売り上げランキング : 6744
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本書の趣旨は、一言で言ってしまえば、「生産年齢人口の減少による諸問題」ということ、です。現在この生産年齢人口の減少の諸問題は、様々なところで議論されるようになっていますので、今(2015年)から5年前に出版された本書は少々賞味期限切れかもしれませんし、ネタの新鮮さはなくなっているかもしれません。
しかし、本書が世に「生産年齢人口の減少」を説いた端緒であったことを考えると、その功績は大きいかもしれません。その時の社会に与えたインパクトを考えてみて、一度目を通してみようと手にしました。
貿易収支、国内総生産、失業率など、社会の成長の指標、経済の成長の数値は、日々ニュースなどで報告されていますが、いまいちその数値と自分の生活における実感とが乖離しているように思うことがあります。と、その前に一体それらの数字が何を意味しているのか、どのような意味があるのか、そもそも分らないことが多い。私は経営学部を出ていますが、正直、全く分りません(苦笑)たぶん大学の授業で習ったものがいくつかあるはずなのですが、忘れています(苦笑)
本書では、そういった数値がいくつも出てくるのですが、それらを解説する本ではありませんので、じっくり読もうとしても付いていけないところがあります。この辺りの細かいところは少し脇に置いて、とにかく読み進めてみる忍耐は必要かと思います。しかし、その細かいところが理解できていなくても、ニュースによく出る数値だけでは社会の実態を見通せない側面があることを著者は示してくれます。いくつかの数値を取り上げながら、それらの数字が経済の実態を現すには無理があると、名古屋や青森などの事象を例に挙げながら伝えてくれます。
著者の藻谷氏が取り上げている数値に対して、それはトンデモだとか、それは恣意的だという批判もあるようですが、細かい内容は専門家の方の議論に任せておくとして、とにかく生産年齢人口が減少していくということは事実で、今まさに進行していると言うことに目を向けるのが大切なようです。本書は5年前に出されたもので、少々ネタバレでもあり、賞味期限切れなところもありますが、藻谷氏が5年前に書いた世界の負の一部が、5年後の今現実としてやってきた感があり、藻谷氏への批判のいくつかは間違っていたことが分かり、今読む意味もあるように感じました。
著者は様々な地域を実測してきたようなので、その実感が本書を支えているのだろうと思います。そして、よくありがちな悲観論や終末論をベースにした本ではなく、本書は、これから当然やってくる明らかな時代を解説し、そしてどんな気持ちでいたらいいのか、そういった対策のところもしっかり書かれています。
著者の藻谷氏は、報道ステーションなどでコメンテーターとしてテレビでも見かけることがあります。話し方にちょっと癖がある感じがありまして、本書を読んでいても、そのテレビでのシーンがちらついて正直読書が進まないところもあったり(失礼!)、 大上段からものをいう感じのところも鼻が付いたのでありますが、それを差し引いても、読んで良かったかなと思います。そんな感じで、ちょっと癖はあるけど読んでみようかなと思ったら、手に取ってみてください。
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デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
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『技士道15ヶ条』 西堀榮三郎 朝日文庫
技士道 十五ヶ条 ものづくりを極める術 (朝日文庫 に 9-1) 西堀 榮三郎 朝日新聞社 2008-01-11 売り上げランキング : 44311
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シャープの凋落ぶりが深刻だが、それを評して、識者の中にはその原因を、「液晶テレビでの成功体験にしがみついた結果」と言う人がいる。インターネットが普及し、常に新しい情報が行き交うなかで、今日新しかったものが、明日の朝には色褪せて見えるくらいとてつもなく新陳代謝が速い世界になり、かつての成功体験がもはや通じなくなっているという意見も確かに頷けるところもある。
しかしそうはいっても人間は経験によって成長するものだ。挫折も含めて、経験は人を大きくしてくれると思うし、それなくして人生を語ることは出来ないように思う。なので、識者が言う成功体験の否定は、ちょっと的外れのような気がする。悪いのは、成功体験だけで舞い上がってしまい、その成功を分析したり、次のステップに活かそうとする真摯な態度がないことなのではないだろうか。大事なのは、成功した結果ではなく、そこに行くまでの過程の分析ができているかだ。その分析がなければ、確かに一回の成功はそれっきりで後には続かない。
本書の著者である西堀榮三郎氏は、第一次南極観測隊の副隊長兼越冬隊長を務めたり、品質管理の分野で活躍したりと、様々な分野で先駆的な活躍をされた実践家。経験の塊のような人物です。
私がこの方を知ったのは、たまたま見ていたNHKのプロジェクトX。それは第一次南極観測隊についての回だったと思うが、既に故人である西堀氏の言葉や態度がところどころで挿入され、その時の状況が熱く再現されていました。そこで、西堀氏のお弟子さんの一人が、実験の失敗をしたときのことを語っており、怒られると思ったら逆に西堀氏はよくやったと誉めてくれたという。その時のことをこのお弟子さんは今でもしっかりと覚えていて、感極まって大泣きしながら語っておりました。私はこれほどまでに人を惹きつける人物とは、一体どんな人なのか、それ以来ずっと頭の隅にありました。そしてある時その頭の隅が蓋を開けて、ふと思いついてAmazonで探して読むことにしたのです。
本書の出だしは、西堀榮三郎氏の自伝的な内容。しかし自伝的内容に留まらず、自分がどうしてこの道を選んだのかという背景が、人間と自然の関係の在り方を現していてとても興味深いです。自然を尊重しながら、自然と同期していく氏の歩み方は、これからの日本にとっても参考になるところが多いです。
その次は、「技術を考える」ということで、ここでも自伝的要素を少し含みつつ、技術者としての心構えを説いております。私も鍼灸という技術の研鑽を積む者として、読んでいると背筋が伸びる感じがします。
続いて「品質を考える」ということで、工業製品などの品質管理について記してあります。私は大学では経営学部に通っていましたが、その中で、QCサークルと呼ばれる品質管理の授業を受けたことがあります。しかしその当時は全くもってそれが何にとって重要であることなのかも分らず(教授もけっこうフランクにゆるい授業ということもあってか・・・)、「サークルって、大学のサークルみたいなもの?なに、楽しいのそれ?」みたいなノリでよくわからず聞いておりました・・・。そんな私のいい加減さを反省しながらこの章を読んだわけですが、新しい発見といえば、品質管理といえば日本のお家芸かと思ったのですが、戦後はそうではなかったということをここで知ったことです。原発の汚染水処理の問題で、“オールジャパン”という言葉がよく使われていましたが、今も技術水準は高いままで、“オールジャパン”と誇れるだけのものがあるのかどうか、もしかしたらその水準が揺らいでしまったからこそこのような事態にあるのか、少し考えさせられるお話しでもありました。
その後、「組織を考える」「技術を極める」という章が続き、西堀榮三郎氏の思いの丈が隅々までほとばしっていきます。
この本は、いくつかのところで発表されたものをまとめ、加筆されたそうなのですが、氏はこのとき御年82歳。とてもとても、ここまで書けるものとは・・・。頭もクリアであることはもちろんのこと、それを支える体力もしっかりしていたこと、そして何よりこの社会を良くしていこうという強い情熱が、氏の一生を通じて貫き通していたのでしょう。
人を学ぶということは、人の経験や体験を学ぶことでもあります。昨今成功体験に拘泥するなとも言われますが、いやいややはりこれだけの大人物に出会えることは、その方の良き体験を学ぶことであり、そこから自分の糧にもつながります。
本書は若い方にももちろんですが、人生の後半を充実したい方まで、幅広い年齢でそれぞれの示唆をえることができると思います。そして、本書がすごいところは、単なる懐かしいで終わってしまいがちな自伝的なもので終わらずに、それよりも何倍にも増して具体的な方法論もたくさん包摂された実践の書であること。86歳まで技術道を貫いた魂の、体験的、実践的書籍なのであります。
NHKのプロジェクトXで、西堀榮三郎氏が良く語っていた言葉が紹介されていました。上述したお弟子さんも、失敗された時に西堀氏に語ってもらって救われた言葉。それは・・・
とにかく、やってみなはれ 西堀榮三郎
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技士道 十五ヶ条 ものづくりを極める術 (朝日文庫 に 9-1)
- 作者: 西堀榮三郎
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- 発売日: 2008/01/11
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『ただの私 オノ・ヨーコ』 オノ・ヨーコ、飯村隆彦著 講談社文庫
ただの私 (講談社文庫) オノ・ヨーコ 講談社 1990-09-06 売り上げランキング : 175436
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一度は読んでみたかったオノ・ヨーコの著書。でも、何だかずっと取っつきにくかった。たぶんそれは、オノ・ヨーコの奇声(のように私には聞えるある曲の歌声)であったり、ジョン・レノンと二人で裸で写っているジャケット写真とか、そういう(よくいえば)アヴァンギャルドな側面への嫌悪感によるもの。本来自分には、そういうアヴァンギャルド(というかはぐれもの的な)なものに憧れを抱く面もあるのだけれど、でもやっぱり保守的であってしまう自分へのアンチとしてのオノ・ヨーコ像。そういったものがオノ・ヨーコへの偏見となり、読もうと思ってても遠ざけてしまってきた理由なのだろう。私だけではなく、ビートルズを壊した女性、ジョン・レノンをたぶらかした女性、そうった嫌悪感をオノ・ヨーコに抱く人はたくさんいるだろうが、それはそれで善悪をない交ぜにする、ある意味オノ・ヨーコという人物のエネルギーそのものなのかもしれない。
と、一般庶民の私がオノ・ヨーコを語る術もないわけですが、そうやって遠ざけながらも気になっていた著書を手に取ったわけであります。
で、読んでみると、そういった誤解がどんどん解けていくのです。確かに育ちは常識外れのお嬢様であり、当時としてはまだ珍しい留学をしてみたりと、自分には想像しようにも想像できない部分がたくさんある。しかしそれにも増して、どこか共感できるようなところも兼ねている、その共感できる視点が重なる部分が増えるに従い、誤解が解けていく。
そして、オノ・ヨーコという人物への誤解が解けていきながら先を読み進めていくと、それ以上に大切なものが現れてくる。それは、この社会を根本的に牛耳っている価値観のようなものを、この際一切合切変革してみてはと思う、そんな力強さです。さらに、それが必ず実現できるというシンプルな思い込み。それこそがこの人を動かし支えているのだということ。それを知ると、今の自分は相当に忘れてしまったものがあるのではと思い知らされる。
では、その変えるべき価値観とは何か?
それは、「男性社会」ということ。「男性の価値観」を主にしてきた社会を変える、ということ。
男性社会を変えるというと、今度は極端に上下を反転させて、女性上位になって男は軒下に・・・ということをすぐに思い浮かべるかもしれませんが、オノ・ヨーコが言いたいことは、男女の平等ということだと思います。そしてその平等の視点は、より広い意味でこの世界、この地球、この宇宙を変えていくのだということ。
広く広く、宇宙そのものを変えていく。それは、イデオロギーではなく、一人一人の思いなのだと、本書を読んで強く感じることができる。思えば自分は、どうも最近そういった大きなエネルギーみたいなものを心底信じることをしてこなかったように思う。ここでもう一回、心のねじを締め直してみたいと思うのであります。
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