『ただの私 オノ・ヨーコ』 オノ・ヨーコ、飯村隆彦著 講談社文庫
ただの私 (講談社文庫) オノ・ヨーコ 講談社 1990-09-06 売り上げランキング : 175436
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一度は読んでみたかったオノ・ヨーコの著書。でも、何だかずっと取っつきにくかった。たぶんそれは、オノ・ヨーコの奇声(のように私には聞えるある曲の歌声)であったり、ジョン・レノンと二人で裸で写っているジャケット写真とか、そういう(よくいえば)アヴァンギャルドな側面への嫌悪感によるもの。本来自分には、そういうアヴァンギャルド(というかはぐれもの的な)なものに憧れを抱く面もあるのだけれど、でもやっぱり保守的であってしまう自分へのアンチとしてのオノ・ヨーコ像。そういったものがオノ・ヨーコへの偏見となり、読もうと思ってても遠ざけてしまってきた理由なのだろう。私だけではなく、ビートルズを壊した女性、ジョン・レノンをたぶらかした女性、そうった嫌悪感をオノ・ヨーコに抱く人はたくさんいるだろうが、それはそれで善悪をない交ぜにする、ある意味オノ・ヨーコという人物のエネルギーそのものなのかもしれない。
と、一般庶民の私がオノ・ヨーコを語る術もないわけですが、そうやって遠ざけながらも気になっていた著書を手に取ったわけであります。
で、読んでみると、そういった誤解がどんどん解けていくのです。確かに育ちは常識外れのお嬢様であり、当時としてはまだ珍しい留学をしてみたりと、自分には想像しようにも想像できない部分がたくさんある。しかしそれにも増して、どこか共感できるようなところも兼ねている、その共感できる視点が重なる部分が増えるに従い、誤解が解けていく。
そして、オノ・ヨーコという人物への誤解が解けていきながら先を読み進めていくと、それ以上に大切なものが現れてくる。それは、この社会を根本的に牛耳っている価値観のようなものを、この際一切合切変革してみてはと思う、そんな力強さです。さらに、それが必ず実現できるというシンプルな思い込み。それこそがこの人を動かし支えているのだということ。それを知ると、今の自分は相当に忘れてしまったものがあるのではと思い知らされる。
では、その変えるべき価値観とは何か?
それは、「男性社会」ということ。「男性の価値観」を主にしてきた社会を変える、ということ。
男性社会を変えるというと、今度は極端に上下を反転させて、女性上位になって男は軒下に・・・ということをすぐに思い浮かべるかもしれませんが、オノ・ヨーコが言いたいことは、男女の平等ということだと思います。そしてその平等の視点は、より広い意味でこの世界、この地球、この宇宙を変えていくのだということ。
広く広く、宇宙そのものを変えていく。それは、イデオロギーではなく、一人一人の思いなのだと、本書を読んで強く感じることができる。思えば自分は、どうも最近そういった大きなエネルギーみたいなものを心底信じることをしてこなかったように思う。ここでもう一回、心のねじを締め直してみたいと思うのであります。
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