『日本人の心情論理』 荒木博之著 講談社現代新書
ときどき日本人て何だろうと思ったりします。日本人は特殊だとか、日本人の常識は世界の非常識だとか、いろいろ言われたりします。グローバルスタンダードなんてかっこよさげな言葉を持ち出すまでもなく、世界で浮いたりしてしまうこともあるらしい。では、いったい日本人って何でしょう?
本書はたまたま古本屋さんで見つけました。以前の講談社現代新書は、杉浦康平氏の印象的な装幀が素敵なわけですが、本書もその例に違わずいい感じ。ということで、表紙見買いをしたわけです。
本書の冒頭は、沖縄の伝承民謡から始まります。日本人の心情論理というタイトルからすると、王道的には茶の湯のようなワビやサビから入るのかと思いきや、南国の沖縄からスタートです。著者の略歴を見ると、アジア民俗学会理事をされており、『フィリピンの民間説話』と言った本も出しているので、南国の香り漂う沖縄の伝承民謡から入るのも頷かれます。
そんな意外性を持ちつつ本書が始まるのですが、その民謡の中には、著者がキーワードとする「清浄美」「きよら」と言ったものがちりばめられており、とても気分が良くなるのです。読み始めた当初は、南国の香りと日本人の感情論理が今ひとつどうつながるのかと思っていたのですが、それがどんどんつながっていき、根底でつながっているものを感じさせてくれます。そしてそのキーワードが、道元の辞世の句、明恵上人の和歌にも通じていく、ダイナミックな論理的展開が読んでいてとてもワクワクするものでした。
最近の新書は、タイトル先行で中身がなかったり、後半息切れずるものが多いのですが、本書は手抜きのない終始一貫したうつくさを感じるものです。そして、それが日本人の心情論理に通じると言うことで、とても印象深い一冊となっています。
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