『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』 奥田健次著 大和書房
叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本 奥田 健次 大和書房 2011-12-24 売り上げランキング : 2707
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行きすぎた体罰が定期的にニュースになって報道されます。その度に、体罰の是非が問われ、それをネタに討論する番組があったりもします。また、古いところではスポーツ=しごきのようなイメージのこともまだ多いようで、以前は「尾藤スマイル」と称された箕島高校の尾藤監督の笑顔などは、しかつめらしい顔をした監督が多い中で、伸び伸び野球の代名詞として珍しく捉えられていました。打って変わって今は若い監督を中心に、監督も選手も笑顔で野球をやっているところが多くなっているようですが、厳しい指導がいいのか、笑顔がいいのか、これもまたそれぞれ議論が分かれるようです。
鍼灸院で小児鍼をしていると、様々な親子にお目にかかることになります。元気いっぱいのお子さん、元気が有り余っているお子さん、とても聞き分けのいい子、しっかりと自分のことを伝えようとする子などなど、ほんとうに小さい子供は個性が豊かで、それを前面に押し出して、こちらもそのエネルギーに圧倒されるほどです。私はその個性が大人になって消えないように、それぞれがそのまま大きくなったらパワフルでいい社会になるような気がしますので、それぞれのパワーを尊重して接するようにしています。
しかし中には、「この子は言うことを聞かないんですよねぇ~」とつぶやいたり、「ほら、鍼治療をするよ、ゲームは辞めて!」とお子さんを強く諫める親御さんがいらっしゃいます。
私は鍼灸施術者として接しているわけで、教育者でもありませんし、ほんの何十分かの滞在時間ですので、そういった教育的指導について、何かアドバイスをしようにも正直そこまで的確なケアが出来ないことがあります。また、それぞれの家族には、それぞれの方針がありますので、そこに口出しをすることはその否定にもつながりますので、静観するしかありません。それでもやっぱり、アドバイスを求められる時がありますので、私も喧々諤々、誉める教育がいいのか、厳しく叱る教育がいいのか、改めて考えてみることが多くあります。
本書はその一つの解決策として、「誉める教育」あるいは「叱らない教育」というものをモットーにしたもの。著者の根底には、「行動分析学」という心理学の一つの学問があるわけですが、これをベースに、どう接したらいいかという内容が基本になっています。
行動分析学とは、人の心や情緒とか、性格とかは無視して、外に現れている行動様式のみを分析の対象にしていきます。ですので、お子さんが何を思ったとか、何を考えたとか、そういったことは念頭に置きません。そのため、どこかドライな感じがしてしまいます。それ故に、最初から嫌悪感を覚えるかもしれません。しかしまず最初に治したいのは行動です。その行動の延長に一人の人間の自立があるのであれば、情緒や心がとかいう前に、行動そのものを変えていく手立てを踏むことが先決であります。その方法論を伝えようとするのが本書と言うことになります。
本書が必要な方は、情緒や心の成長を重視しすぎるがあまり、子供の意思を尊重しすぎて自由気ままにさせてしまい、子供が我儘放題になってしまったご家族ではないかと思います。家族の主導権が完全に子供に移ってしまい、それに振り回されてしまっている、そういった方にお薦めです。中途半端に子供に主導権を渡すのではなく、しっかりと大人が主導権を持つこと、それは体罰ではなく、誉めること、ルールを決めてそれに従うようにしていくことで可能となることを解説しています。本書だけではなかなか理解できないところもありますので、先ずは下にある他の参考書を読むことをおすすめします。
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