『武術と医術』 甲野義紀・小池弘人 集英社新書
武術と医術 人を活かすメソッド (集英社新書) 甲野 善紀,小池 弘人 集英社 2013-06-14 売り上げランキング : 155880
|
甲野義紀氏は、古武道を通して人間とは何か?動きとは何か?ということを問い続ける現代の求道者。そして小池弘人氏は、その甲野氏に武道の手ほどきを受けた医師で、統合医療を推進している方。どちらも正統な流れからすると、少し異色の存在。特に甲野氏の探究心は、画一化された現代社会においては特別な存在で、益々その異彩が放たれているはないでしょうか。
本書は二人の対談です。甲野氏が小池氏に呼びかける形で始まったようで、小池氏は、冒頭から自分の専門分野である医術について、特に統合医療について語りはじめる。そこに甲野氏が切り込んでいくといった感じです。
対談というものは、お互いの共通認識を共有することから深まっていくものですが、薄い対談やその方向性を見出せないときは、お互いの主張をするだけで噛み合わないまま終わることも少なくない。そのため、とても著明な人が語り合ったものでも、中身がなかったり、表層的な話しで終わってしまうこともしばしば。
しかし本書は、武術と医術という難しく、奥が深い話題にもかかわらず、両者の語り合いがうまく噛み合っており、かなり突っ込んで所まで話をしています。
対談ですから、細かい議論、正確な知識というよりは、お互い経験論でざっくばらんに語っているのは当然で、それがいいと思う人もいれば、いい加減な井戸端会議と思う人もいるかもしれません。しかし、本書は対談のいい所が出ており、かつ真摯に向き合って話している様子がうかがえて、なるほどと二人の対談に思わず頷いてしまうところも多々あります。対談としては、中身が濃いものではないでしょうか。
本書では、代替医療について語っているところが多いですが、正直なところ、代替医療は玉石混淆であります。そのあたりのところをもう少し突っ込んでみても面白かったのではと思います。本物を見極める目、そういったものをどう養うかというところも聴きたかったのが素直な感想です。
個人的には、甲野氏の若いときの志の持ち方がとても気に入りました。探求していくことは、一生を通じてぶれないことが大切なのだと思います。私も鍼灸師としてまだまだ探求すべき分野がたくさん遺されていますが、この好奇心と探究心を絶やさずに、鍼灸道を邁進していきたいと思います。
【さらに調べる】
「甲野義紀」 「小池弘人」 「統合医療」 「代替療法」 「東洋医学」