『もしもあなたが猫だったら？』　竹内薫　中公新書

　本書のタイトルそのままに、「もしも自分が猫だったら？」。
　もしも猫だったら・・・一日中日向ぼっこして寝ていようかなとか、自分のジャンプ力を試してみようとか、やってみたいことはいくつかあります。手が届かないところに足を伸ばして思う存分掻いてみようかなとか。

　いえ・・・そうではなくて・・・。

　本書の副題にある「思考実験」とは、単に自分が猫だったら何をしたい、ということではなく、一体全体猫の目にはこの世界はどのように見えているのだろうかと、より生理学的な想像をしてみたらどうだろうか、そうするともう少し科学が身近なものになり、そして、もしかしたらそれが何かの発見につながるかもしれない・・・それこそ“実験”なのだ、ということなのです。空想を空想で終わらせるのではなく、そこに知識や学問を総動員してみると、想像を超えた世界が広がって、より現実的に考えていく、それが「思考実験」。

　思考実験とは、様々な想像をより具体的に考えるもの。それはある意味、相手の立場になって考えてみると言うことでもあります。猫の立場、自然の立場、宇宙の立場、様々な立場になって考えてみると、自分の中に寛容性が育つのではないでしょうか。そしてそこに科学というものが加わることで、より現実的に、そしてもしかしたら新しい発見や発明につながるかもしれないというワクワクがあります。

　本書は科学ライターとしてテレビなどでも活躍する方。分りやすい解説ということでは、“科学版池上彰”という感じでしょうか。そんな方がお話しする本書ですから、おもしろいわけがありません。ちょっと科学の頭を呼び戻したい方などお薦めの一冊です。