『マムアン げんきげでる編』 ウィスット・ポンニミット著 パイインターナショナル
いつの頃だったか、仕事場近くのお洒落なカフェで、「『マムアン展』開催中」という看板を見ました。その看板と言ってもポスターや木製ではなく、お店の入口の大きなガラスに白色で直接描かれたもの。クリスマスなどの時に、白い文字がガラスに書かれる、あんな感じの案内でした。
その案内には、この本の表紙が描かれていたのですが、そのとき私は“マムアン”なるものが何なのかよくわからず、この女の子がマムアンなのか、この女の子を描いている人がマムアンなのかなとか、勝手に想像しながら何なのかよくわからないまま、そしてGoogleで検索することもなく、何となく無邪気な感じがいいなぁと、そこのカフェの前を通る度にその絵ををちらちら見ていました。
結局そのカフェはお洒落で夜はお酒を飲むところになりますから、お洒落でもなく、お酒も飲まない私は中に入ることなく、ただただその絵を気にしながらも素通りするだけ。
そしていつしか時が経ち、季節も変わっていきましたが、そのガラスに描かれた案内はいつまで経ってもそこに描かれたまま。たぶんもうとっくにその『マムアン展』は終わっているはず。でもいつまで経っても消されませんでした。
という感じで、いつしか私の頭の中にはこの女の子のキャラクターだけが頭に焼き付いてしまいました。
そこからさらに時間が経過して、気がついたらお洒落カフェの窓からマムアンが消えて、私の記憶からも遠ざかっていきました・・・。
で、再会したのが表参道ヒルズでした。表参道ヒルズ内にある(今はないのかな?)ギャラリーショップで、マムアンのリトグラフや原画が売られていて、ちょっと懐かしさを感じながらの再会でありました。
と、前置きがかなり長くなりましたね・・・。
本です。本。
この『マムアン 元気がでる編』は、かわいい少女、マムアンちゃんのイラストともに、一言ことばが添えられて、なんともいえない気づきを心に呼び起こします。ほんわかと、ふんわりと、小さい頃はこんな感じで無邪気に生きていたよなぁと、遠い昔の感覚を引き戻してくれます。そしてその感覚は、決して昔は良かったよなぁという懐古的なものではなく、また、変に頑張り直すようなものでもなく、自然と優しく導いてくれる感じです。砂漠の中を途方もなく歩き続けていたら、目の前にこんこんと湧き出る泉に出くわしたような、そしてその泉の中に身を委ねるようなそんな安心感を呼び覚ましてくれます。
著者は、タイ人の方。日本の漫画に憧れて、日本の神戸にも留学していたそうです。そんな著者のルーツが、ピュアな世界観を産み、そして日本人ぽいけでおちょっと異国な感じもするマムアンちゃんというキャラクターを生みだしてくれたのかもしれません。
とにかく、一度読んでみてほしいと思う、一度開いてみてほしいと思う、そんな一冊であります。
【その他のお薦め本】
- 作者: ウィスット・ポンニミット/ Wisut Ponnimit
- 出版社/メーカー: パイインターナショナル
- 発売日: 2011/08/10
- メディア: 単行本
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