『メリットの法則 行動分析学・実践編 (集英社新書)』 奥田健次著
メリットの法則――行動分析学・実践編 (集英社新書) 奥田 健次 集英社 2012-11-16 売り上げランキング : 2992
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私はどちらかというと、情緒とか感情とか、そういったものを基準にしたい方です。あまりにシャープに法則や理論だけで割り切るのは苦手です。小児鍼を通して多くのお子さんと接する機会がありますが、どちらかというと、こどもの個性を伸ばしてあげたい、こどもの自由を尊重したい、そういう気持ちで接しています。
しかし、そうとばかりいかないこともあります。ある意味とてもこどもらしいお子さんは、いわゆるきかん坊であったり、はちゃめちゃに飛び回ったりします。またその逆に、おとなしすぎるという子もいたり、まだまだ発展途上の心を捉えるのはとても難しいものがあります。
例えばそういったお子さんを目の前にして、私が親御さんに、「もう少しやさしく接してあげてください」とか、「もっと愛情をもってみてあげてください」といっても、何も解決になりません。というのは、そこに具体的な解決策がないからです。そして、よっぽどの無関心な方でなければ、お子さんには目をかけてきているものですから、私がそこを知らずに言うことは、全くの無責任ということになります。
子育てに明確な答えはないのかもしれません。しかしそうはいっても、何か具体的に出来ることがあるならば、それを実行してみることは大事なことではないかと思います。
本日冒頭に取り上げた本は、「行動分析学」という心理学の一つの分野です。行動を分析し、その分析に従って指導する。それだけを聞くと、ひょっとしたらこの学問は、何やら人間性を無視した乾燥した感じを受けるかもしれません。本書を読むと、実際にそういった多くの言われなき誤解を受けているようなニュアンスを汲み取ることができ、著者自身も、そういった指摘をするところは少しテンションが上がっているように思いますが、それは、大事なことは、相談者がいかに自立できるかということが大切であり、それを具体的に解決する方法こそが必要とされているのだという著者の強い信念と志の裏返しの言動ではないでしょうか。人間性を大事にするからこそ、はみ出しすぎている部分は修正してあげること。それが、社会性を身につけ、ひいてはそれが人間性にもつながるというもの。
本書は、著者自身の若々しい言動が鼻につくかもしれません。しかし、言っていることは至極当然なことで、具体的な方法づくりにはとても役に立つものです。そしてこれは、子育てとか、子供の成長と言ったことだけではなく、現在多くのところで見受けられる社会的秩序が失われた大人の振る舞いに対しても、有効ではないかと思います。
直したいクセが誰にもあるかと思います。もうゲームなんて辞めてしまいたい、などなどいろいろ直したい行動のクセはあるかと思います。そういったものを是正するためにも、本書が解く行動分析学は大きな役目を果たすのではないでしょうか。情緒や感情面を強調し、自由という曖昧なものを頼りにしすぎるがために、結果としては自分勝手な行動を放置しているだけに成り下がっている・・・そういった場面を目の当たりにしている方にとって、本書は大きな示唆を与えてくれるのではないでしょうか。
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